五島列島の真ん中にある奈留島にきています

”遠いところへ行った友達に潮騒の音がもう一度届くように”

ユーミンの歌に「瞳を閉じて」というのがあります。五島のある島の高校生がユーミンに手紙を出し、彼女に作曲してもらって校歌として歌われているという曲。島を出て離ればなれになった友達を思う歌詞に、子どもながら、同じ島なのになんて素敵な曲を歌う学校があるものだ、いつか行って見たいなあと思っていました。それがこの奈留島。

自分の故郷を旅する。ふるさとは多くの人にとって帰るもの。それを旅するという、相反することをしてみようと思ったのが4年くらい前。ちょうど南米から帰国し、30歳を過ぎたところで、自分の故郷をもっと知りたくなってきた時期。そしてそれができてしまうのが、長崎県という特異な地域でした。

長崎には日本で一番多い600ほどの離島があり、いま人が住んでいるだけで70幾つの島があるそうです。同じ県内なのに、端から端まで行こうとしたら2日くらいかかってしまいます。これまで実家の松島がある西海市を中心に、黒島、平戸島、生月島、小値賀島、中通島、島原、天草島、福江島、久賀島などいろんな島を巡ってきました。

知っているけれど見たことのない風景。懐かしいけど、はじての町。時代の先端を行く中央から離れ、交通の便のよくない離島に渡るほど、時間はゆっくりと流れるもの。島の雰囲気やそこで生活する人たちの姿に、まるでタイムマシンで自分の子ども時代に戻ったような懐かしい気持ちを覚えることが、今までに何度もありました。黒島で、日曜の朝に教会の鐘が響く中、耕運機に乗ってミサに通う老人たちをみた時は、懐かしさと新鮮さで言葉にならない感情がこみあげてきました。きょう泊まっている奈留の民宿でも、糊がバリバリに貼ってあるシーツと浴衣を触り、食べ残したご飯で作った糊でアイロンをかけていた祖母のことを思い出しました。

ちょうど一年後に新宿/大阪ニコンサロンで三木淳賞新作展が開催されるので、今年は3月から毎月一回長崎に写真を撮りに帰っています。そして来年の同時期に、はじめての写真集も出版できる運びになりました。そうすると、撮影できるのはひとまず来年の3月くらいまで。この3年半くらい続けてきた長崎の旅も、いよいよクライマックスという感じです。

瞳を閉じて https://www.youtube.com/watch?v=vt6Y9SL0Hm8

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