「日本のイスラム移民社会」について

「日本のイスラム移民社会」はすごく大きいテーマですが、2011年の東日本大震災の後、東北の被災地を継続的に支援していた在日ムスリム(イスラム教徒)たちと出会ったことがきっかけで取材をはじめました。

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それ以前には、学生時代に西はボスニア・ヘルツェゴビナのサライェヴォ、東はバングラデシュやミャンマーまで、イスラム圏を旅してから帰国し、日本に住んでいるムスリムがどのように暮らしているのか、ずっと興味がありました。

日本に住んでいる彼らムスリムと付き合ってみると、日本社会に溶け込んでいる部分も、独自のムスリム・コミュニティを築いている面も、両方あり、当たり前ですが、なかなか一概に言えないものだと実感しました。

東京都内や千葉・埼玉などにある、雑居ビルの一部だったり、ビルごと買い取ってあったり、あるいはプレハブだったりする日本のモスク(礼拝所)に通ってきました。特に週末になると、近隣に住むムスリムがそこへたくさん集まって礼拝し、一緒に食事を食べたり、子供に勉強やアラビア語を教えたりしています。

モスクの部屋で聖典クルアーンを一生懸命に読み上げるムスリムや、モスクのイマームや世話人に家族や生活の悩み相談をする姿は、自分が子供の頃、故郷にある浄土真宗東本願寺派のお寺に通っていた人々の姿を思い出し、懐かしさすら覚えました。彫りの深い顔に、立派な髭をたくわえたりしていて、一見とてもイカつい人もいますが、仲良くなるととても良くしてくれるのは、海外でイスラム圏を旅したときと全く同じです。

また、たとえばアラビア半島出身のムスリムと、バングラデシュのムスリムでは、イスラムのとらえかた、文化、生活習慣や性格まで、幅がとてもあり、一口にイスラムといっても、実はすごく多様なものだということが分かってきました。一方で、ムスリム同士はただイスラムを信じているというだけで、すぐ打ち解けて助け合ったりする面もあります。

2001年の9・11事件の後は、やはり日本でも差別や偏見が増え、不快な思いをすることもたまにあると彼らからよく聞きます。また、日本にあるモスクと在日ムスリムはなかりの割合で公安に監視されていて、カメラを持ってモスクを訪ねると、はじめは怪訝な顔をされることもあります。

一方で、日本では宗教に対する寛容度が高いためか、東北の被災地でそうであったように、意外に外から来たムスリムとネイティブの日本人が打ち解けて仲良くなってしまう面もあるように感じます。欧米より日本の方が暮らしやすいと言うムスリムも少なくないです。ただ、日本では子供にイスラムを教えられる学校が教育施設がないところが、ネックになっているようです。

近年、欧州ではムスリムと現地社会の軋轢が増し、またイスラム圏から難民が大挙して押し寄せるという状況になっています。日本では、それほど深刻な問題はまだ起きていません。イスラムも含めて、宗教や文化、ルーツを異にする人々が、欧米の先進国とはまた違った形で社会の中で共存できる可能性もあるような気もします。

日本にはすでに数百カ所のモスクがあって、その数は増え続けており、ムスリムの数も少しづつ増えています。ただその存在や、彼らが何を信じて、どのように生きているのか、まだあまり知られていないと感じているので、彼らのところに通って写真を撮ってきました。

また、日本でも、これから労働力を増やすために大量に移民を受け入れる必要があるという人もいますが、あまりに急激に(労働力として、政策的に、意図的に)移民を増やすのは、いろいろな面で準備が間に合わず、問題があると個人的には感じています。

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