三木淳賞受賞展『ジャシム一家』おわり

三木淳賞受賞展『ジャシム一家』きょうで無事終了しました。6日間と短い期間でしたが、約1500人の方に来ていただきました。ありがとうございました。

今回は写真集は出さないの?という声がとても多かったので、重い腰をあげ来年は写真集制作も再開したいと思います。これまでの2年くらいの編集期間と、4回の写真展で、だんだんと自分が『ジャシム一家』の作品で表現したいことがつかめてきたこともあります。


ギャラリーでは、銀座展以上にいろんな方とお話しできたのがよかったです。トークも大勢きてくださって、昨年よりはるかに実感を持って、写真をみてくれた方が増えました。「移民」を受け入れる日本社会が大きく変化しているんだなと感じました。

観た方の気になる写真が、ほんとにバラバラなのが面白かったです。団地の台所、子ども、車、ゴミ箱、病院、魚、ポートレート…各々の写真の中に、それぞれの人生の琴線に触れる何かが写っているようでした。

地味に気に入ったのは、

「カレーが食べたくなる。カレーは写っていないのに、ジャシム一家の生活を眺めたらスパイスの香りがする。」

という感想でした。

来年は新しいプロジェクトの撮影にも力を入れ、短期の仕事でも、自分にできることをやって行きたいと思います。

『ジャシム一家』も、引き続き展示などの機会がありましたら、お気軽にお声がけください。

そして、貴重な機会をくださったNikonサロンのみなさま、ありがとうございました!

あと、大阪展も年明けに開催です

★『ジャシム一家』@大阪Nikonサロン★
2019年2月7日(木)〜13日(水)

関西のみなさま、こちらもよろしくお願いいたします!

新宿ニコンサロンでのトークイベント

きのうは新宿ニコンサロンでトークイベントでした。
予想よりはるかにたくさんの方に来て頂きました。

こんな大勢の前で1時間も話したことがなかったので、途中で息継ぎできなくなったりしたけど、 望月 優大 さんの豊富な知識と、経験に支えられたナイスな質問と進行に助けられました。

「移民」と「イスラム」というマイノリテティなテーマ。かつ「ドキュメンタリー写真」という地味な分野。これだけ人が来てくれるということは、やっぱり時代が急に変わっているんだなあと感じました。

来て頂いたみなさん、ありがとうございました。
きのうは北海道の大学の同期や先生、いろんな懐かしい人も来てくれて最高に楽しかったです。

今後も、機会があれば展示とトークなど積極的にやっていきたいと思います。何かあれば是非お声がけください。

★展示は明日12月10日(月)がいよいよ最終日です★
最終日は15時までなのでお間違いなく!

最後までよろしくお願いいたします。

 

三木淳賞受賞写真展『ジャシム一家』開催中

写真展『ジャシム一家』毎日18時半まで、新宿駅直結エルタワー28階の新宿Nikonサロンに在廊しています。アンコール展ということもあり、今日は展示内容について少し書こうと思います。

まずタイトルの『ジャシム一家』ですが、はじめは英語でLiving in Between とか、つけていました。そしたらRPSの後藤由美さんに、「もっとなんとか一家とか、わかりやすくてバーン!っていうやつがいいんとちゃうか?」と言われ、短くなりました。そして、『ジャシム一家』という名前は、2008年木村伊兵衛賞作の『浅田家』へのオマージュでもあります。
(写真家の浅田政志さんが授賞式で声をかけてくれて嬉しかったです)

イスラム教徒 × 移民 という固いテーマの作品でもありますが、おそらくほとんどの人が撮ったり見たことのあるのが「家族写真」。それを通して、ジャシムさんたちが日本で暮らしている様子を、コミカル、かつリアリティをもって伝えられないかと考えました。

はじめの頃は、いろんな「在日ムスリム」を撮ろうと意気込んでいました。でも2012年にジャシム一家と出会ってからは、この家族だけを撮ろうと決めました。最初の頃はバリバリ撮っていたけど、数年経つと、泊まりに行って、写真を撮っているより、一緒に買い物に行って、ご飯を食べて、喋ったりテレビをみているだけような時間が増えました。

あと、転機になったのは、2015年の夏に、東川町の奨学金でラトビアのISSPに参加させてもらったことでした。この時の講師は、マグナムのアレッサンドラ・サンギネッティ。アルゼンチンで従姉妹同士の二人の女の子を撮った「The Adventures of Guille and Belinda」が好きで、彼女のワークショップに入りました。

アレッサンドラに言われたのは、もっと肩の力を抜いて、子どもたちと遊びながら撮れば?という言葉。ISSPに参加した約2週間。80人くらいの写真家が、同じ北欧の片田舎に、同じ時間滞在したのに、あまりに多様な作品ができあがったのに驚きました。そして、「写真は自由でよい」という、大切なことを教えてもらいました。

ギャラリーでよく聞かれるのが、なんで額装とパネルを混ぜているのか?
これは、僕の立ち位置の曖昧さと、文化の間のあってないような「境界線」を表わしています。同じ日本で、同じようなレベルの生活をしている僕とジャシム一家。もちろん共感できる部分がたくさんありました。一方で、全てを理解することができないイスラムという宗教や、バングラデシュの文化。ジャシムさんたちとの付き合いは、常にその間で揺れ動いています。

フレームに納められることによって、ある種の「敬意」が生じる額装と、イメージが直接浮かび上がるパネル写真。それを混ぜることで、彼らを見ている僕の視線を再現できるのではと思いました。

また、パネルの大きさをバラバラにしたのは、L版のスナップと、ポートレートを効果的に使いたかったから。L版のスナップは、「家族写真」の定番だと思います。おそらく誰にでも記憶のある、家族や友人との記念写真。僕が撮ったのか、家族が撮ったのか、わからないような写真を、実際に部屋の壁に貼ってあるような感じで展示しています。

展示の順番は完全に時系列ではないけど、「フォトジャーナリスト」として撮り始めた自分が、だんだんジャシム一家の親戚みたいな関係になっていくように構成しています。

そして、同じ日本で暮らしているのに、時として別のレイヤーの世界に在るように感じる、彼らの生活の不思議な雰囲気を感じてもらえるように写真を選んでいます。

今回は、写真展で使わなかった写真を60枚くらい入れたポートフォリオブックや、ジャシム一家と日本のイスラム社会について書いた雑誌なども会場に置いてあるので、時間のある方はぜひ手にとってみてください。

三木淳賞授賞式にて

きのうは新宿Nikonで伊奈信男賞・三木淳賞の授賞式でした。

びっくりするぐら大勢の人が授賞式に参加していました。
受賞スピーチでは緊張しましたが、写真をはじめてからこれまでのこと、自分の出身や長崎のこと、ジャシム一家を撮り始めた理由や、今後のテーマなどを話しました。パーティーでもいろいろな方と知り合えてよかったです。

2年後の東京オリンピックがおわった2020年の秋頃、同じ新宿のTHE GALLERY で新作の展示をする予定です。
来年からはさらに加速して作品制作に取り組みたいと思います。

昨年8月の銀座ニコンサロンから今回の展示まで、写真編集と設営を手伝ってくれた写真家の友人たち。またニコンサロンとギャラリースタッフの皆様と、審査員の方々、今後もサポートをして頂けるニコン社の方々に感謝いたします。本当にありがとうございました。